目次
統語論
統語構造
語の配列に関わる構文的な構造
それらについて研究する言語学の分野を「統語論」「構文論」という。
表面的には線条性を持った配列によって、音声化・文字化される。しかし、そのもの自体は抽象的なものである。
統語構造は単なる語の羅列ではない
統語構造に関する知識は文の理解において大きな役割を果たす。
文中の単語の知識がなくても、統語構造がその解釈を手助けしてくれる。
文法関係
文における構造的な働きに注目したそれぞれの関係
太郎が(主語)パンを(目的語)食べた(述語)
太郎に(主語)タイ語が(目的語)読めた(述語)
格関係
格
文法関係に応じた、名詞の形態的な表示に関わる概念
日本では「格」が格助詞によって明確に現れる。ガ格や二格の名詞句がどのような働きを持つかは、固定的ではなく、それぞれの文ごとに決まってくる。
※日本語教育では、格助詞が文構造を理解・表現するために不可欠な学習項目である。
文中での名詞句の形態的な表示に関わる概念
太郎が(主格)パンを(目的格)食べた(ー)
太郎に(与格・二格)タイ語が(主格・ガ格)読めた(ー)
言語の習得の過程
語⇒文⇒段落
初期の言語習得においては単語の知識が必要
単語を組み立てて文を作るようになる段階では統合的な知識が必要
さらに習得が進むと、文レベルの統合的な知識に加えて、文同士のの論理的な繋がりに関わる段落レベルの言語知識が重要
言語構造の複雑さ
語⇒文1(短文)⇒文2(複文)⇒段落
単文と複文の違い
単文
1つの文の中に述語が1つだけの文
例:今夜は大雨が降るそうです。雨靴を履いていったほうがいいですよ。
複文
1つの文の中に述語が2つ以上ある文
例:今夜は大雨が降るそうなので、雨靴を履いていったほうがいいですよ。
単文を複文にするのに必要な文法形式は?
接続助詞を用いる
代表的な接続助詞
のため から のに けれど が にもかかわらず
接続助詞を用いて、短文を繋げると複文になる。
統語的な難易度は
・構造の複雑さに対応している
・複文を作る接続助詞と名詞修飾節などの修飾要素が増えるほど、文は複雑で難しくなる
実質的な統語分析
品詞と語順
例
語群:太郎 ドア 閉まる 閉める が を ゆっくり
「ゆっくり」の語順は、述語となる動詞の前であれば、どの位置にも表れることが出来る。
「ゆっくり」を除けば、「閉まる」は1通りの組み合わせしかないが、「閉める」は2通りの組み合わせが可能。
「ゆっくり」のような副詞は、語順の制約が緩やかである。
「ゆっくり」の他、「はっきり」「のんびり」などの動詞の様子を説明する様態副詞(情態副詞)の語順はあまり制約がない。
しかし、同じ副詞でも「程度副詞」は修飾する形容詞などの前にしか来ない。
例:とても重いカバン ×重いとてもカバン
「ゆっくり」を除けば「閉まる」は1通りの組み合わせしかないが、「閉める」は2通りの組み合わせが可能。
主語と目的語を持つ他動詞では、主語と目的語の語順は構造的には入替可能である。
例:太郎がドアを閉める ドアを太郎が閉める 後者は協調の意味が加わるなどという意味的な違いはある。
独立した文としては、主語と目的語は動詞の後に来ることはない。
例:×ドアを閉める太郎が
名詞修飾
「限定用法」と「非限定用法」
限定用法
例:100年以上も前に建てられた建物 「100年以上も前に建てられた」という名詞修飾で建物を限定する。
非限定用法
例:100年以上も前に建てられた東京駅 「100年以上も前に建てられた」という名詞修飾は建物を限定する必要はないが補足情報を付け加えられる。
内の関係
文の内にあった要素が修飾される名詞
例:パンを焼く職人 ⇒「職人がパンを焼く」という文の内側に主語「職人」としてあったもの
外の関係
修飾される名詞が、対応する文の内ではなく、外にある名詞修飾
例:パンを焼くにおい ⇒名詞修飾節「(人が)パンを焼く」という文の中に「におい」は存在しない
例文
留学生が読む本⇒限定用法・内の関係
友達と行った沖縄⇒非限定用法・内の関係
子どもが笑っている声⇒限定用法・内の関係
友達から聞いた話⇒限定用法・内の関係
友達が合格した話⇒限定用法・外の関係
複文の種類と接続助詞
順接
例:接続助詞「ので」 ~ので~
逆接
例:接続助詞「けれど」 ~けれど~
意味論
意味
伝統的な意味論では、
意味をいくつかの構成要素による構造体と捉え、他の語との関係を考慮しながら記述する方法をとる。
意味成分
語を構成している特徴
成分分析
語を意味成分に分解すること
例
+:特徴を持っている ー:特徴を持っていない
夫⇒+人間 +既婚 ー女性
妻⇒+人間 +既婚 +女性
配偶者⇒+人間 +既婚 ±女性
配偶者は性別に関する意味的な特徴を限定しない
意味の範囲 :配偶者>夫 妻
例文
本がご飯を食べた
食べる:+生物
本が:ー生物
「食べる」という語の持つ選択制限に合わない
包摂関係
上位語と下位語
例:おかし⇒上位 ケーキ⇒下位
下位語は習得が早く、上位語は習得が遅い
下位語は具体的なもので、鉛筆や消しゴムなど。 上位語は総称的・抽象的なもので、文房具など。
意味関係
類義語
部分的にほぼ同じ意味を共通して持っているが、それぞれに異なる意味も持っている。
例
きれいな花 と 美しい花 ⇒両者にほとんど差がない
きれいな空気 と 美しい空気 ⇒美しい空気 は 違和感がある
きれい は 見た目の華やかさ に加え、 不純なものがない という意味も持っている。
きれい は 美しい よりも広い意味をもっている。
同義語
指し示す対象の範囲がほとんど同じような同義的関係を持つ語同士のこと
全く同じ意味ということはなく、文体・スタイル・場面・文脈などで使い分けられる
例:きのう と さくじつ
対義語(反義語)
例:表=裏ではない 裏=表ではない という対義関係にある
相互的対義語
AでなければB
例:男と女 表と裏
両極的対義語
AとBの両語が両極的
例:入学と卒業
連続的対義語
AとBの両語が両極的ではあるが、中間的な段階を持つ
例:高いと安い
視点的対義語
AとBの両語が異なる視点から表現される
例:行く と 来る
ダイクシス(deixis)
言語活動において、発話現場にいなければ意味が成立しない性質のことをいう。直示とも呼ばれる。
多義語
例:花 ⇒お花見に行く 両手に花 高嶺の花 長年の苦労がやっと花開いた
例:甘い ⇒甘い採点 甘い歌声
多義語は限定されていない 例:走る 重い 熱い
実践的な意味分析
例文1
足りない と 物足りない
1.学校の勉強だけでは足りない
足りない:数量的なものが不足している 時間が足りない 点数が足りない
2.学校の勉強だけでは物足りない
物足りない:心理的に満足していない
例文2
ところ
場所以外の意味でも使われる
1.先週勉強したところを復習しましょう:箇所
2.あなたの考えるところを書きなさい:事柄
3.ちょうど今終わったところです:時間
4.このところ雨が続いています:時間
類義語
行く 向かう・向かう 落ちる・降りる 理解・了解 あつい・暖かい
多義語
観る 出る 甘い 大きい
語用論
意味論では、主にコンテクストから切り離された意味を扱い、文が持っている意味論的な意味だけでは説明できないような現象がある。
語用論では、コンテクスト(文脈・状況)との関連を重視し、話し手の伝えようとする意味を扱う
例:A=消しゴム持ってる? B=これ使って
例
「今何時?」の意味
1.深夜に電話をかけてきた弟に対して⇒迷惑だ
2.待ち合わせに30分遅れてきた友達に対して⇒腹立たしい
3.夜中までゲームをしている子どもに対して⇒早く寝なさい
依頼の例
早く来てください⇒ 遅い! まだ来ないの? 来る気があるの?
勧誘の例
一緒に帰りませんか?⇒ 一緒に帰らない? まだ帰らないの? 帰るよ! 駅前に新しい店が出来たんだって!
断りの例
いいえ、帰りません⇒すみません、ちょっと先約があるので ちょっと都合がつかないので あまり体調がよくないので ごめん、また誘って!
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