日本語教師の学習/言語と社会の関係

言語接触

言語接触

異なる言語の話者同士の集団が、社会的に接触すること。

ピジン

通商・貿易などを目的として、異なる言語の話者同士が、互いの言語の要素を取り入れた人工的に作った補助言語。

クレオール

ピジンがある地域において長期期間使用されているうちに、その地域の共通の言語として使用されるようになったもの。ピジンより文法体系が整っており語彙数も多い。

共通言語(リンガ・フランク)

異なる言語の話者同士が意思疎通のために使用する言語。現在では英語が共通言語として使用されることが多いので、英語のことを指す場合もある。

ダイグロシア

社会の中に「高変種」「低変種」の2つの言語変種が存在し、場面や状況によって、それぞれが使い分けられている社会状況。ファーガンが提唱した二言語変種併用社会とも呼ばれる。

バイリンガルは個人レベルであり、ダイグロシアは社会レベルであるという点で異なる。

高変種

ダイグロシア状態にある社会で、より改まった公的な場面で使用される言語形式。H変種とも呼ばれる。

低変種

ダイグロシア状態にある社会で、よりくだけた私的な場面で使用される言語形式。L変種とも呼ばれる。

ポリグロシア

状況・場面によって3つの言語変種が使い分けられる社会状況。

多言語主義と複言語主義

多言語主義

ある社会において、複数の言語が共存している状態。
社会の中でどの言語を使っても、そのために不利にならないような社会を目指すもの。

社会における言語使用に関するもので、ある社会において複数の言語が共存しており、そのうちいくつかが公用語とされている。

複数の言語が共存しているが、個々人は1言語のみを使用する。

複言語主義

個人レベルで、複数の言語能力を持ち合わせている状態。
欧州評議会が提唱した概念で、CEFRの根幹に関わる考え方。

コミュニケーションのための言語を第一言語(母語)だけに限定しない価値観を持ち、相手や状況によって、複数の言語を使い分ける態度を持つ。

個人の言語使用に関する考え方で、一個人が複数の言語を使えるが、その人の生活形態や目的によって、それぞれの言語運用レベルは差があってよい。

それぞれが、何れかの言語能力を同等に持っているとは限らない。

複言語主義の特徴

言語能力の高低を問題にするのではなく、個人の持つあらゆる言語知識や社会的な経験などを駆使して、コミュニケーションを成立させようとすることを重視する。そのため、言語の熟達度ではなく、言語やそれに関わる多様な文化的背景に対する寛容さが重視される。

複言語主義に基づく言語教育の見方

言語能力を一定の熟達度に達成させることを目標とするのではなく、たとえ未熟であっても、コミュニケーションを成立させ、課題を達成することを重視する。

バイリンガルと複言語主義の違い

バイリンガル

2言語を同時に使いこなせること(ただ使えるということだけ)

複言語主義

複数の言語を使おうとすること(態度)

コミュニケーションのための言語を第一言語(母語)だけに限定しない価値観を持ち、相手や状況によって、複数の言語を使い分ける態度を持つ。

言語習得における従来型目標と複言語主義の目標

従来型の目標

母語話者と同程度の言語能力を目指す

複言語主義の目標

その言語で何が出来るかを重視し、目的にあった能力を設定する

必ずしも、母語話者並みの言語能力を目標とせず、個々人のニーズを重視する

その言語を使ってできる(can-do)ことを目指す ⇒CEFR

CEFR

ヨーロッパ言語共通参照枠

どの言語にもあてはまる言語能力の測定基準として欧州評議会で出されたもの。背景には1人の人がいくつかの言語を必要に応じて使用するという副言語主義がある。CEFRでは言語能力を「~ができるcan-do」という形で記述している。

CEFRが発表されて以降、言語教育の在り方は大きく変わった。「JF日本語教育スタンダード」もCEFRの理念に基づいている。

従来、日本語学習の目標は、日本語母語話者と同等と考えられていたが、CEFR以降、学習者の目的に応じて、日本語で何ができるかで考えられるようになった。

can-do評価

「~ができる」という形で言語能力を測る尺度。具体的な課題遂行能力として示される。

言語的人権

言語的人権

自らが望む言語を自由に使用できる権利(言語権)

ある国・地域の少数言語話者が、そこでの公用語、共通語を学ぶ機会を保障し、かつ、民族語を学び、使用することを認め、言語的な差別を受けないことを含む。

国連憲章や世界人権宣言にも明記されている。

国際人権規約自由権規約第27条

第二十七条

種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。

出典:外務省ホームページ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/2c_004.html

民族語

ある国、地域における少数者言語。

危機言語

消滅の危機にさらされている言語。

2009年にユネスコは世界で約2500の言語が消滅しかけているとの報告を出した。

アイヌ語

主に北海道に移住するアイヌ民族が使用する言語。

日本政府は1997年に、初めてアイヌ民族を日本民族とは異なる独自の民族として法的に認めた。

明治時代には、アイヌ民族に対する「同化政策」がとられ、日本人から厳しく差別され、自分たちがアイヌ民族であることを隠して、子供たちにアイヌ語を教えない人が多かった。そのため、アイヌ語の言語継承が約100年にわたって途絶えてしまった。

同化政策

強力な力を持つ国家や支配的な民族が、力を持たない植民地の原住民や国内少数民族に、自分たちの文化・生活様式・価値観を強要し一本化しようとする政策。

言語計画

ある国家において、複数の言語が使用されている時、どの言語を優先するか、共通語をどのようにしていくかという政策。

席次計画

ある国で使用されている複数の言語の中から主要なものを選択し、どの言語を公用語・国語とするか、政治・法律・教育はどの言語で行うか、マスメディアなどはどの言語を用いるかなどを考え、順位付けを行うこと。地位計画とも呼ばれる。

実体計画

席次計画で選定した言語の実態を明らかにすること。具体的には文法書や辞書を作成したり、表記法を定めたりすること。コーパス計画、本体計画とも呼ばれる。

普及計画

実体計画で明らかにされた言語を国民に普及していくための計画。教育制度を整え、そこで普及させる、新聞、テレビなどのマスコミを通じて普及させるなど。習得計画とも呼ばれる。

継承語

何世代か前の自分の直系親族の言語。

継承語教育

自分の親、あるいは何世代か前の直系親族の言語を学ぶこと。

移民が多いオーストラリアなどでは、政策として行われている。

LOTE:ローテ Language Other Than English

継承語教育として英語以外の言語を学ぶもの。

オーストラリアのLOTE

アラビア語 ギリシア語 中国語 日本語 フランス語 イタリア語 ドイツ語 スペイン語 インドネシア語 マレー語

アイデンティティ

自分が何者であるかという意識。自己同一性。自我同一性。

アイデンティティが安定している時、人は自分が何者であるかと問うことはない。しかし、思春期や別の文化や社会へ移動したとき、アイデンティティは強く意識される。自分が考える自分の姿と、他人が自分をどうみなすかという側面がある。

アイデンティティ・クライシス

アイデンティティの危機。

異文化との接触などで、自分が何者であるか分からなくなってしまった状態や、自分が考えている自己の在り方と、他人から見た自分の姿が一致しなくなった状態。

 

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