漢字廃止論・制限論
「漢字廃止」「漢字制限」のメリット
学習の負担が減る
みんながよめる
「漢字廃止」「漢字制限」のデメリット
過去の文献が読めなくなる
同音異義語の表し方が長くなる
歴史
1866年 漢字御廃止之議 前島密(ひそか) 徳川慶喜に建議
1873年 文字之教 2000~3000に限ってはどうか 福沢諭吉
猿橋式カナモジ 日本新字 ひので字
漢字表の必要性
文字:読み書き能力の歴史を伴う 知識層の占有物を社会の共有物にしなければならない
社会が共有する漢字:コミュニケーションの手段=自分も相手も知っていることが大切
日本語の書記法では、社会が共有すべき漢字の範囲を定める ⇒ 誰もが読めることを要する文書に用いる漢字は、その範囲に収める努力をすることが必要
当用漢字表
1946年 当用漢字表 1850字
1948年 当用漢字音訓表
1949年 当用漢字字体表
法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で使用する漢字の範囲を示したもの
今日の国民生活の上で、漢字の制限が、あまり無理がなくおこなわれることをめやすとして選んだ
当用漢字表の意義
ローマ字化を抑え、使用漢字による格差をなくすという意味で、一定の役割を果たす
一方で、「当用漢字ないないづくし」
常用漢字表
1981年 1945字
法令・公用文書・新聞・雑誌、放送など一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すもの
2010年 改定 2136字
常用漢字表
一般の社会生活で用いる場合の効率的で共通性の高い感じを収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安
字体
形の違う漢字がある デザインは違うが字体は同じとしている
構成
本表 2136字 字音によって50音順
漢字 音訓 例 備考
出典:文化庁ホームページ https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/
付表 特別な読み方をするものがまとめられている
出典:文化庁ホームページ https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/kanji/
2010年「常用漢字表」改定の理由と意義
1981年の「常用漢字表」の考え方を踏襲
社会的に共有される「読み取りやすさ」「漢字の表現力」「情報化社会の実態」
読み取りやすさ
新聞・雑誌・書籍などでよく用いられる語彙のうち、次のような語が「交ぜ書き」「ルビ付き」を要しなくなった。
挨拶、憂鬱、勾配、痕跡、必須、親戚 など
漢字の表現力
同訓字の書き分けができるようになった。
字を書く・絵を描く 質問に答える・期待に応える 嫌な臭い・良い匂い 思いの外・他の人 風呂が沸く・勇気が湧く
情報化社会の実態
ワープロやパソコンの普及に伴い、使える漢字が増えた(書けなくても使える)
改定の例
食事療法 食餌療法
改定時に入らなかったもの
障碍者
加わった読み方
私 : わたくし ⇒ わたし が加わった
十分 : じっぷん ⇒ じゅっぷん が加わった
付表
一日 : いちにち ⇒ ついたち が加わった
明日 みょうにち ⇒ あす 小豆あずき 田舎いなか 大人おとな
お巡りさん 仮名 姉さん 為替 果物 景色 乙女 眼鏡 今朝 下手 兄さん 今日
お神酒・おみき 固唾・かたず 稚児・ちご 意気地・いくじ 山車・だし 竹刀・しない 河岸・かし 桟敷・さじき 猛者・もさ 蚊帳・かや 十重二十重・とえはたえ 老舗・しにせ
常用漢字のほかに、漢字の制限をしたもの
子供の名前に使えなかった「苺」が2004年に使用が認められた
教育漢字の歴史
1948年 当用漢字別表 教育漢字 881字
1958年 学習指導要領で既定 991字
1968年 備考漢字を追加し、教育漢字 996字に
1989年 学習指導要領の「学年別漢字配当表」に 1006字
2017年 「学年別漢字配当表」 1026字 学習漢字・教育用漢字 といわれる
人名用漢字の歴史
1951年 人名用漢字別表
⇩
2022年現在は 863字
人名に使える漢字
常用漢字 2,136字+人名用漢字 863字 =2,999字
漢字制限の影響による漢字の代用(書き換え)
障害者 を 障がい者 と書く 障碍者の碍が使えない為
衣裳 を 衣装 に代用 裳を使えない為
管弦楽 賛美歌 台風
漢字でも書けるが、かな書きをする場合
かな書きする場合
その漢字が常用漢字表に入っていない。
漢字そのものは常用漢字表に入っているが、その音訓が入っていない。
公用文などで、漢字を使わないことになっている。
公用文における漢字使用
次のような代名詞は原則として漢字で書く
俺 彼 誰 何 僕 私 我々
次のような副詞及び連体詞は原則として漢字で書く
副詞
余り 至って 大いに 恐らく 概して 必ず 必ずしも など
連体詞
明るく 大きな 来る 去る 小さな 我が(国)
ただし、次のような副詞は原則として仮名で書く
かなり ふと やはり よほど
接頭語 御・ご について
原則として、接頭語がつく語が漢字の場合は漢字、平仮名の場合は平仮名で書く
御案内 御挨拶 ごあいさつ ごべんたつ
次のような接尾語は原則として仮名で書く
おしげもなく 弱み 私ども 少なめ 偉ぶる
次のような接続詞は原則として仮名で書く
おって かつ したがって ただし ついては ところが ところで また ゆえに
※ただし、次の四語は、原則として漢字で書く
及び 並びに 又は 若しくは
助詞・助動詞は仮名で書く
行かない 雨が降るようだ 二十歳ぐらいの人 調査しただけである 三日ほど経過した
次のような語句を次の例文のように用いるときは原則として仮名で書く
許可しないことがある。
事故のときは連絡する。
現在のところ差し支えない。
正しいものと認める。
説明するとともに意見を聞く。
一部の反対のゆえにはかどらない。
賛成するわけにはいかない。
次のとおりである。
その点に問題がある。
そこに関係者がいる。
合計すると1万円になる。
だれでも利用ができる。
図書を貸してあげる。
負担が増えていく。
報告していただく。
通知しておく。
問題点をお話してください。
寒くなってくる。
書いてしまう。
見てみる。
連絡してよい。
間違いかもしれない。
調査だけにすぎない。
これについて考慮する。
欠点がない。
漢語の分類
漢字の構成の捉え方
一語全体意味
左右(上下)各漢字の意味
左(上)の漢字と右(下)の漢字の関係
日本語教育への応用→パターン(型)を立てておく
主語+述語
国立 日没
述語+補語(目的語)
乗車 読書
修飾語+被修飾語
読者 美人
修飾語+被修飾語
緩行 急進
同じような意味
樹木 河川
反対の意味
表裏 上下
日本語教育への応用→パターン(型)を立てておく
〇ー△(〇が主語、△が述語型) 地震
〇←△(△を〇する、△に〇する型) 作文 習字
〇→△(〇が△を飾る型) 高山
〇・△(〇と△が対等に並ぶ型) 永久 河川 高低 善悪
〇←△(〇が△を打ち消す型) 未知(まだ知らない)
有←△ 無←△(△がある・ない) 有名 無名
3字以上の漢語
1字ずつに分かれるもの 上中下 都道府県
2字と1字、1字と2字に分かれるもの 好奇心 新空港
2字と2字に分かれるもの 横断歩道 電車通勤
やさしい日本語
軽傷→小さいケガ
出火→火が出る
浸水→部屋に水が入る
全壊→全部壊れた
半壊→半分壊れた
不通→通ることができない
読み方による分類
音読み+音読み(漢語)
説明 童話 鉛筆 肉食
訓読み+訓読み(和語)
面長 親子 言葉 麦飯
重箱読み
音読み+訓読み(混種語)
番組 本箱 本棚 役場
訓読み→濁音になる
湯桶読み
訓読み+音読み(混種語)
見本 場所 梅酒
どちらでも読める漢語
草原 くさはら と そうげん ではイメージが異なる
異字同訓(同訓異字)
あらわす
現す 著す 表す
あつい
暑い 熱い 厚い
反対の語を考えると分かりやすい
寒い 冷たい 薄い
気温 温度 幅
かたい
堅い 固い
音読みで違いを伝えることができる
けん こ
さす
差す 刺す 指す
異字同音(同音異字)同音意義語
こうえん
後援 公園 講演 講演 好演
てきかく
適格 的確 適確
かいとう
回答 解答
たいしょう
対象 対照 対称
「しょう」の意味で考える
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