日本語教師の学習64/アクセントとイントネーション

目次

母音の無声化

母音が声帯振動を失い、息だけの無声音で発音されること。

母音の無声化が起こるとき

~ます [masɯ̥]

あした [aɕi̥ta]

発音記号の下に〇を付ける

以下の3条件を満たすとき、母音の無声化が起こる

前が無声子音のとき

カサタハパ行

母音[i][ɯ]が無声化

イの段とウの段の拍の母音 キシチヒピ クツフプツ

ウの段の拗音の母音 シュ  ※外来語以外では長音で無声化しない キュー チュー ヒュー ピュー

フィ

で全部で12個

次が無声音か、無音

カサタハパ行 又は 語末・文末

例外

ムスメ スギ

カカ ココ が低高で始まる場合の1拍目

 

ハ(無声子音a) ホ(無声子音o) が低高で始まる場合の1拍目

 

e も無声化することがある

セッカイ

無声化の条件のはずでも起こりにくい場合

アクセントが高い場合 

アクセントが高く次に低くなる場合 

無声化する拍が続く場合は聞こえにくくなるのを防ぐ ウツシー

促音化

例 洗濯機

鼻濁音(ガ行鼻音)

語中でガ行の子音が語頭と同じ有声軟口蓋破裂音[g]ではなく、有声軟口蓋鼻音[ŋ]で発音された場合

鼻濁音になる音

語中のガ音

牛乳 戦後 上がる

助詞のガ

わかしが いきます 田中ですが

連濁によって生じたガ行音 雨傘 大会社

結び付きの強い複合語のガ行音

大学 小学校 例外:高等学校 経済学部

鼻濁音にならない音

語頭のガ行音

画廊 外国

擬声語 擬態語 漢語の重ね言葉

ガラガラ カンカンガクガク

外来語中のガ行音

セネガル ハンバーガー 例外 イギリス オルガン

数字の五

千五 五十五 例外 七五三 十五夜

敬語の接頭語「お」の次のガ行

お元気 お具合

鼻濁音が使われくなっていく

意味の区別に関与しない

大学

意味の区別に関与する

戦後 と 1005 、大烏 と 大ガラス

文字が同じ

大学 だいがく

規則が難しい

ギニ ギャニャ ギュニュ ギョニョ の区別が難しい

カニ と カギ

母音の連続

母音と母音をきちんと区切るときには、声帯が閉じ声帯閉鎖(破裂)音が、間に挟まるような発音になる。

王を追う [oːoʔoʔoː]

尾を覆う [oʔoʔoːoː]

青い家 [aoiʔie]

長母音と母音連続

里親 [satoʔoja]

砂糖屋 [satoːja]

枯れ枝 [kareʔeda]

カレーだ [kareːda]

重母音と母音連続

重母音

英語の I [ai]  1つの音

母音連続

愛 [a][i] 続いた2つの音

長母音が短母音になる現象

体育⇒たいく 学校⇒がっこ 本当⇒ホント 面倒くさい⇒めんどくさい 格好いい⇒カッコいい

「シュ・ジュ」が「シ・ジ」になる現象

ユシュツ ユシツ

シュクダイ⇒ シクダイ

ガイシュツ⇒ ガイスツ

ゲシュク⇒ ゲシク

ギジュツ⇒ ギジツ

シュジュツ⇒ シジュツ シュジツ シジツ

アクセント

個々の語について決まっている

橋  箸 

社会的習慣として恣意的に決まっている

東京:橋 し  大阪・京都:橋  ー 

相対的である

並んだそれぞれの中での高さや強さの相対的な違いを聞き取って判断している

高さ(又は強さ)の配置

高低(高さ)のアクセントと強弱(強さ)のアクセントがある

共通語のアクセント

共通語は「高」と「低」の2段の「高さアクセント」

拍を単位とし高低を配置する

規則1

単語を単独で読んだ時、1拍目が「低」なら2拍目は「高」、1拍目が「高」なら2拍目は「低」になる

アクセントは拍ごとにきって、コーヒー⇒

実際の発音は、

の、 ⇒ 

規則2

1つの語の中に現れる「高」の部分は、連続していなければならない。1つの単語の中で離れた2か所以上に「高」が現れて山が2つ以上出来たり、間に谷ができたりする語はない。

高さの変化は拍と拍の間で起こる

日本語では1つの拍の中で高さが変わることはない

アクセントの機能

アクセントの弁別機能

飴 と 雨

アクセントの統語機能

語と語の切れ目を示し、どこからどこまでが語のまとまりかを示す働き

・・・ワニ・・・⇒ ワ と 二 の間が切れ目 規則1と規則2で判断できる

アクセントの型

アクセントの核

アクセントの高から低への下がり目をアクセントの滝といい、高の語を、アクセントの核という

核の有無と位置で分類する

核が無

平板式 例 さくらが

核が有

起伏式

核が最後の拍:尾高型 例 おとこが

核が途中の拍:中高型 例 おかしが

核が最初の拍:頭高型 例 みどりが

拍と型の数

拍の数をnとすると

核無:平板式 1種類

核有:起伏式 n種類(どの拍もアクセントの核になり得る)

合計 n+1通りの核がある

アクセントの表記方法

例:さくらが おとこが なかみが みどりが

核(’)

平板型 ①②③ 尾高型 ①②③’ 中高型 ①②’③ 頭高型 ①‘②③

核の位置の数字表記

前から

平板型 0 尾高型 3 中高型 2 頭高型 1

後から

平板型 0 尾高型 -1 中高型 -2 頭高型 -3

高低

核のある拍:◎ 助詞の拍:●

〇〇●  〇◎   ◎   ◎
〇    〇  ● 〇 〇●  〇〇●

アクセント核の位置のみを表記する理由

単語を単語単独で読んでも、前に何かが付くと変わる。核の所だけは変わらない。

カタツ’ムリ

コノカタツ’ムリ

ヘンナカタツ’ムリ

アクセント表記に基づいた語の読み方

テンドロイカカ’リア

核が1拍目

1拍目:高 2拍目:低 3拍目以降:低 助詞:低

核が1拍目以外

1拍目:低 2拍目:高 3拍目以降:核の拍まで高・それ以降は低 助詞:低

核が無し

1拍目:低 2拍目:高 3拍目以降:最後まで高 助詞:高

1拍目から2拍目にかけての読み方

頭高の語:音が上がるところはない

それ以外の語:1拍目から2拍目にかけて音が上がる

2拍目が 撥音ン・長音ーの拍の場合

1拍目からいきなり高いような形で発音させることが多い

参加 サンカ ンカ 通り トーリ ーリ

2拍目が 促音ッの拍の場合

行った イッターーー イッ 3泊目が高くなるように聞こえる

アクセントの核になりにくい拍

特殊素因(撥音 促音

母音が連続した時の後部の母音の拍

無声化した母音を含む拍

幹事会 カンジカイ ⇒基本形

講師会 コウシカイ⇒基本形基本形

展覧会 テンランカイ⇒撥音 ⇒後ろから3泊目が核になれない拍は核が前に1拍ずれる

朝食会 チョウショクカイ⇒無声化母音を含む拍 ⇒後ろから3泊目が核になれない拍は核が前に1拍ずれる

チョウショッカイ⇒促音 ⇒後ろから3泊目が核になれない拍は核が前に1拍ずれる

定例会  テイレーカイ⇒弾く音国民大会 ゼンコクタイカイ⇒連続母音の後部 ⇒後ろから3泊目が核になれない拍は核が前に1拍ずれる

アクセントの最後に

動詞や形容詞、それらが活用した場合

数詞、助数詞や合成語

助動詞や助詞がついた時のアクセント

共通語以外のアクセントなど

気になることは『撥音アクセント辞典』などでチェック

イントネーション

文の抑揚、すなわち分を単位とする声の高さの時間的な変化のこと

言語教育などの場面では、文末の音の高さの変化・文末イントネーションを示すことが多い

イントネーションの基本形

準備

文に含まれる語のアクセントの核を表示する

一息に読む単位である句切れを決める

次に

句切れの第1拍に核が無ければ低とし、2拍目から高に上げ、核の拍までそのまま進む

核があったら下げ、下げた後まっすぐ進む

句切れがきたら1へ戻る

核「’」 句切れ「、」

のかたか’
なはよ’
こ       くよ’
めませ’

のかたか’  、よ’
こ    なは、 くよ’めません

文末のイントネーション

上昇調

質問、勧誘、誘いなどに用いる 日本語の上昇は最後の拍にのみ集中する

下昇調

納得、残念などに用いる

プロミネンス(卓立)

伝達の意図で文中の特定の部分を他の部分より際立たせて発音すること

手段

強弱 速度(ゆっくり・早く) 前(後)にポーズを置く

 ⇒プロミネンスを与えると こカナ この と カタカナが区切られた印象を与える

プロソディー

超分節的特徴

学習者の発音の誤り

誤りを聞き取る

誤った音などを音声学的に把握する

正しい発音と比較し、音の違いを音声学的に把握する

誤りの原因などの考慮をもとに、発音指導へとつなげる

母音図アイウエオ

チェックポイント

唇の丸めの有無

舌の前後の位置

舌の高さ

子音に関する誤り

声帯振動の有無

息が声帯を振動させているか

調音点

息を妨害している位置

調音法

息を妨害している方法

指導法

余剰的特徴

破裂音の区別

弁別素性 声帯振動の有無

余剰的特徴 無声音で舌が張り(tense)、有声音で緩む(lax)緊張度の違い

従来の音声指導の問題点

文法は、体系的指導であるが、音声は、その場の誤用指摘のみ

文法や語彙指導と連動して、音を視覚的に指導することが必要

導入の順

・リズム、イントネーションから指導

・コミュニケーション能力のため、リズムの基本→プロミネンス→イントネーション→複合練習

体系的指導方法の確立へ

シラバス・カリキュラムの作成

1.どのような音声項目を 2.どんな状況で 3.どのように練習するか

項目

1.どの程度 2.どんな状況で 3.どのように練習するか

学習者への対応をどうするのか

学習者に向けての

調整 励まし 取り組みの態度

学習者の発音の

評価 指導へのフィードバック

 

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