日本語教師の学習62/子音と音声記号

音声と音韻

音素

音の抽象的な単位

ある言語において、同じ役割(機能)を果たしていれば、その言語にとって、同じ音の単位に属する

音声は[]で表し、音素は//で表す

ミニマル・ペア(最小対語)

1ヵ所だけ音が違っていて、あとは全く同じ対の語

例:キカ[kika] キタ[kita] の場合、kとtがミニマル・ペア

同じ音素の例

英語:sink[sink]とthink[ɸiŋk]では、sとŋは異なる音素

日本語:坂[saka]と[ɸaka]では、両方ともサカなので、同じ音素/s/に属する

フナ[ɸɯna]と フナ[fɯna] では、両方ともフナなので、同じ音素/f/に属する

異なる音素の例

フナ[ɸɯna]と スナ[sɯna] では、ɸとsは異なった音素

異音

音素が実際に音声として実現される(発音される)ときに、様々に異なった音声環境によって現れる変異音

音素/ɸ/ /s/ /r/ に対して、異音[ɸ][f] [s][θ] [ɾ][r][l] の異音がある

自由異音(自由変異)

規則性が無くて、音声環境が定められずに、発音される異音

音声[s]と[θ]は、音素/s/の自由異音である

破裂音の比較例

中国語の[p,t,k][b,d,g](有気音・無気音)と、日本語の[p,t,k][b,d,g](無声音・有声音)の区別が異なる

条件異音

音声環境の条件に従って、規則的に現れる異音

音素/s/の場合、異音[s]は/a/ /u/ /e/ /o/の前に現れ、異音[ɕ]は/i/の前に現れる

このように、お互いに相補いながらこの音が現れる全ての環境をカバーすることを「相補分布」という

代表的な音韻変化

同化

ある音が隣接する音の影響で、共通の特徴を持つ音になる現象

順行同化

先行音が後続の音に影響を与える 英語の複数-s[s/z] 過去形ed[t/d]

逆行同化

後続音が先行音に影響を与える 促音、撥音

異化

ある音が隣接する音に似ない音になったり、同じ語句の中で同種の反復を避けようとする現象

七日をnanakaと言わず、nanokaという

音位転換

音節などの位置が入れ替わる

新た(あらた)⇒あらたし ではなく あたらし aratasi⇒atarasi

交替

類似した音素に置き換えられる

瞑る(つむる)⇒つぶる ではなく つむる

脱落

音素・音節の喪失

荒磯(あらいそ)⇒あらいそ ではなく ありそ(古)

添加

新たな音素・音節が加えられる

霧雨(きりさめ)⇒きりあめ でななく きりさめ

日本語の音の単位

拍(モーラ)

仮名1文字はほぼ同じ長さで発音される発音上の単位

例:ミ・ル・ク⇒3拍 キャ・ㇰ⇒2拍 ファ・ミ・レ・ス⇒4拍 シ・ン・プ⇒3拍 シ・ッ・プ⇒3拍 シ・ー・プ⇒3拍

撥音「ン」、促音「ッ」、引く音「ー」も1拍として数える。

音節

音韻的音節・音素的音節

音としては独立性に欠け、発音上のまとまりとしては、前の拍と一緒に一つの単位を形成する音の単位のまとまり

例: シン・プ⇒2音節 シッ・プ⇒2音節 シー・プ⇒2音節

音声表記

国際音声記号(IPA) 国際音声学協会(IPA)

精密表記

聴覚的に多少でも差があれば表記する

シカケ[ɕikɐkɛ] 音声記号

簡略表記

意味の弁別に必要な記号だけを用いる音素表記に準ずる。教育では条件異音を音声表記した[ɕikɐkɛ]が使われる。

シカケ/sikake/ 音素記号

五十音図とその発音

濁音の役割

・無声子音を持つ仮名文字につく

・子音を有声に変える

・基本的に対応する清音と濁音の調音点・調音法は同じ

・違いは声帯振動の有無 清音の子音が無声音、濁音の子音が有声音

無声子音+濁音総統の部品=有声子音

[k] +濁点=[g]  [p]+濁点= [b]

口蓋化

子音の調音に中舌面が硬口蓋に向かって盛り上がることが加わること。

日本語ではイの段の子音に起こる。

イの前の子音を調整している最中に、次に来る母音「イ」の準備を始めるため。

両唇音

破裂音の例

[p][b]⇒口蓋化なし パ プペポ バ ブベボ

[pʲ][bʲ]⇒口蓋化なし(イの段・拗音) ピ ビ 子音に口蓋化の[ ʲ]を添える

歯茎音⇒歯茎硬口蓋音

[s][z]⇒口蓋化なし サ ザ

[ɕ][ʑ]⇒口蓋化なし(イの段・拗音)シ ジ 調音点がずれ、別の記号で表記される

[t][d][ts][dz]が口蓋化⇒[tɕ][dʑ](イの段・拗音)別の記号で表記される ※破擦音になっている

[n]が口蓋化⇒[ɲ](イの段・拗音)歯茎硬口蓋の調音点の鼻音は[ɲ̟]が正式の表記だが、簡略に[ɲ]で表記する 硬口蓋のこともある

軟口蓋音

[k][g]が口蓋化⇒[kʲ][gʲ](イの段・拗音)舌が前に移動しているので[k̟][g̟]が正式の表記だが、口蓋化として簡略的に[kʲ][gʲ]で表記する

中舌化

調音点が歯茎の子音:ス、ズ(ヅ)、ツ、(ル)など

ウの段の拗音の子音:口蓋化して中舌が硬口蓋に盛り上がっている

ア行

母音図アイウエオ

ア:[a] 非円唇     低母音

イ:[i] 非円唇 前舌 高母音

ウ:[ɯ] 非円唇 後舌 高母音

エ:[e] 非円唇 前舌 中母音

オ:[o] 円唇 後舌 中母音

実際の発音に使われる母音の変種音1

うるさい!何ゆってるの!

唇を丸めた[i]に相当:[ʏ]

唇を丸めた[ɯ]に相当:[u]

実際の発音に使われる母音の変種音2

「ご声援ありがとうございます」と「五千円ありがとうございます」

カ行

[k] 無声 軟口蓋 破裂音

[ka kʲi kɯ ke ko]

カ行の変種音

有気音:気息を伴った音 語頭のカ行 [kʰaga]

無気音:気息を伴わない音 語中のカ行 [gaka]

ガ行

[g] 有声 軟口蓋 破裂音

[ga gʲi gɯ ge go]

ガ行の変種音

語頭:[g] 有声 軟口蓋 破裂音

語中:[g] 有声 軟口蓋 破裂音

:[ŋ] 有声 軟口蓋 破裂音  [ŋa ŋʲi ŋɯ ŋe ŋo]

:[ɣ] 有声 軟口蓋 破裂音 [ɣa ɣʲi ɣɯ ɣe ɣo]

サ行

[s] 無声 歯茎 摩擦音

[ɕ] 無声 歯茎硬口蓋 摩擦音 [sa ɕi sɯ se so]

ザ行

[z] 無声 歯茎 摩擦音

[ʑ] 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音 [za ʑi zɯ ze zo] ジ ズ

タ行

[t] 無声 歯茎 破裂音

[ts] 無声 歯茎 破擦音

[tɕ] 無声 歯茎硬口蓋 破擦音 [ta tɕi tsɯ te to]

タの変種音

語頭のタ:(弱い)有気音のことが多い [tʰaga]

語中のタ:無気音  [gata]

ダ行

[d] 有声 歯茎 破裂音

[dʑ] 有声 歯茎硬口蓋 破擦音  [da dʑi dzɯ de do] ヂ

[dz] 有声 歯茎 破擦音  [da dʑi dzɯ de do] ヅ

ジとヂ・ズとヅの違い

傾向

語中の場合:ジ・ズ 摩擦音

語頭の場合:ヂ・ヅ 破擦音

[ʑ] 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音 [za ʑi zɯ ze zo]

[dʑ] 有声 歯茎硬口蓋 破擦音  [da dʑi dzɯ de do]

[z] 有声 歯茎 破擦音  [da dʑi dzɯ de do]

[dz] 有声 歯茎 破擦音  [da dʑi dzɯ de do]

ナ行

[n] 有声 歯茎 鼻音

[ŋ] 有声 歯茎硬口蓋 鼻音 [na ŋi nɯ ne no]

ハ行

[h] 無声 声門 摩擦音 ハヘホ

[ç] 無声 硬口蓋 摩擦音 ヒ [ha çi ɸɯ he ho] [ɸ] 無声 両唇 摩擦音 フ [ha çi ɸɯ he ho]

現代仮名遣での名残

わたしは、 学校へ いきます。ワ エ と発音

おとうさん オ列の仮名にウを添える

こおり オ列の仮名にオを添える

パ行

[p] 無声 両唇 破裂音 [pa pʲi pɯ pe po]

バ行

[b] 有声 両唇 破裂音 [ba bʲi bɯ be bo]

マ行

[m] 有声 両唇 鼻音 [ma mʲi mɯ me mo]

ヤ行

[m] 有声 硬口蓋 半母音 [ja ju jo]

ラ行

[ɾ] 有声 歯茎 弾き音 [ɾa ɾʲi ɾɯ re ro]

ワ行

[ɯ] 有声 軟口蓋 半母音 [ɯa]

五十音図で覚える日本語の発音

ア行

母音 母音は有声音

ア行以外の行

子音+母音 母音の部分は有声音 子音は有声音又は無声音

半濁音の行

パ 無声音 歴史的には本来のハ行

濁音の行

ガザダ バ 有声音 濁点は清音の子音を有声音にする

清音の行

カサタ ハ 無声音

ナ マヤラワ 有声音 もともと有声の子音には濁点は付けられない

行ごとの調音点

後から五十音順に前へ移動する

行毎の舌の前後位置

調音点

息を妨害する位置

声門

ハ ヘ ホ

軟口蓋

カ ガ ワ 覚え方⇒ 香川カガワ は 難攻 軟口蓋

硬口蓋

ヒ ヤ 覚え方⇒ 火矢ヒヤ で 後攻 硬口蓋

歯茎硬口蓋

シ ジ チ ヂ ニ

歯茎

サ ザ タ ダ ナ ラ 覚え方⇒ サザ(ン)タダ ナラ 死刑 歯茎

両唇

フ パ バ マ

調音方法

摩擦音

サ行 ザ行 ハ行

破裂音

カガ行 タダ行 パバ行

破擦音

チ ツ

鼻音

ガ行 ナ行 マ行

弾き音

ラ行

半母音

ヤ行 ワ

子音の音調法

 

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