目次
誤用分析
誤用分析の意義
日本語学習の習得過程では、その段階に応じて、様々な誤用が現れる。
1.学習者が何をどの程度分かっていて、どこでつまづいているかががわかる。
2.学習者は誤用を産出することで、自分なりのルールの検証や軌道修正を行い、習得を進めていく。
3.母語話者が無意識に使っていることばのルールが明らかになる。
初級レベルの誤用例
あの公園ときれいと大きいです 簡単の作り方から母を教えてもらいました
上級レバルの誤用例
価値観はその人に応じて異なります どうすればいいかは知りかねます
中間言語
学習者の母語と目標言語をつなぐ、段階性を持つ言語体系
初級(前)
椅子 「に が を で から」 座ります ⇒ランダムエラーの段階 ルールがなく思いつくものを選ぶ
初級(中)
椅子 「に が を で から」 座ります ⇒「道具」の「で」は習得している
初級(前)
椅子 「に が を で から」 座ります ⇒一般的な他動詞文は習得している
グローバル・エラーとローカル・エラー
グローバル・エラー
コミュニケーションに支障を来すもので、他の形式にも関わる重大な誤用
ローカル・エラー
規範的な形式ではないが、コミュニケーション上は大きな問題はない誤用
正用:赤ワインを飲みました
誤用1:赤いワインを飲みました ⇒ローカル・エラー
赤い花・赤い傘 などは正用となる可能性が高い
誤用2:赤いのワインを飲みました ⇒グローバル・エラー
イ形容詞+の+名詞 という文法的な誤りが、他の表現でも起こる可能性が高いと考えられる
作文の誤用例
誤用例(初級学習者レベルの例文添削)
こえんへいきました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記
こえんはきれいとおおきいです ⇒グローバル・エラー 接続・活用
フルイ・マーケトでかいものしました ⇒ローカル・エラー 語の選択 「を」の欠落とは考えない
にちようびのばん、わたしは、おかさんとおかさんのしんせきのうちへいきました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記
ベジタリアンぱんごはんをたべました ⇒ローカル・エラー 語の選択
あかいワインをのみました ⇒ローカル・エラー 語の選択
おいしかたです ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 活用または文字表記
たくさんしゅうくだいしました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記 「を」の欠落とは考えない
わたしのしゅうまつはとてもたのしかたです ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 活用または文字表記
代表的な「誤用の種類」①語の選択 ②活用・接続 ③助詞
①語の選択
語の選択の誤り
私は日本語の経済に趣味があります
私のペットは、古い犬です
おおきいこうえんでたんけんをしました
②活用・接続
活用や接続の誤り
活用はむずかしいだと思います
こうえんはきれいとおおきいです
さんぽをするの後で、家に帰りました
駅に近いのアパートに住んでいます
③助詞
助詞の選択の誤りや不足
この椅子を座って下さい
コンビニに働いています
駅に近いアパートで住んでいます
代表的な「誤用の種類」④発音 ⑤文型・活用 ⑥文字表記 ⑦不明
④発音
発音の誤り
たくさんしゅうくだいしました
はがっきに、きてをはて出します
わだしのこどもだちは、かごにかよています
きょうねんの3月にほね来ました
⑤文型・活用
文法的な誤り
かんたん作り方から母を教えてもらいました
日本人の友だち一人がいます。あの人はとても親切です
財布を落としましたとどうすれば良いですかわかりません
日本へ来たとき、国で友だちがパーティーをしてもらいました
料理の日本はとてもおいしいです
⑥文字表記
文字表記の誤り
びじゅつかんんの中でおしろや古いまさのもけいや、小さいしびと古いふぬを見ました
⑦不明(語句)
正用の想定不能
びじゅつかんんの中でおしろや古いまちのもけいや、小さいしびいと古いふねを見ました
誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ①語の選択
語の干渉
了解・理解 折れる・割る(break) 模型・模範(model)
初級段階には多くみられるが、中・上級では少なくなっていく
過剰な一般化
大きい雨 割り箸を開けます 一人で漢字を習いました
頻度が高く、「母語の干渉」より圧倒的に多い
自動詞と他動詞の混同
窓を開きました 電話をバッグに入ります 休みが続けます
自動詞・他動詞の形態的な区別がない「中・越・英」語話者に多い
誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ②活用・接続
「~の名詞」
大きいのスプーン 読んだの本 私が持っているの本
連体修飾の余剰な「の」 中国語話者に多い
タ形とル形の混同
家に帰るのあとで勉強します 日本に来たまえ国で勉強しました
「~だと思う」引用節の余剰な「だ」
とても良いだと思います 難しいだと感じた 降るだと思った
接続助詞「~ても」の「も」の脱落
いくら聞いて、わからない 何回かいて、わからない 熱があって、仕事しなければならない
誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ③助詞
「に」と「で」の混同
工場に働いています 部屋に勉強します 駅に待っています
「に」→「を」
椅子を座る 友達と会う 壁をぶつかる テストを合格したい
「が」→「を」
カメラが壊れた たくさんお金をかかる 日本語をわからなかった
「が」→「は」
日本語教室はある日は木曜です 雨は降る日は嫌いです
誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ④発音
「ー」長音
去年⇒きょうねん ちょうど⇒ちょど カード⇒かど
「っ」促音
切手⇒きて 学校⇒がこ 猫⇒ねっこ 見て⇒みって
「だ/な/ら/」の混同
来年⇒だいねん・ないねん 名前⇒だまえ・らまえ 台⇒ない・らい
「つ」→「チュ」
机⇒チュクエ 疲れた⇒ちゅかれた いつも⇒いちゅも
「ざ・ず・ぜ・ぞ」→「じゃ・じゅ・じぇ・じょ」
雑誌⇒じゃっし ずっと⇒じゅど 風邪⇒かじぇ 家族⇒かじょく
「~ん+を」→「~の」、「~ん+へ」→「~ね」
本を読みます⇒ほの読みます 日本へ来ました⇒にほね来ました
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