★日本語教師の学習47/誤用分析

誤用分析

誤用分析の意義

日本語学習の習得過程では、その段階に応じて、様々な誤用が現れる。

1.学習者が何をどの程度分かっていて、どこでつまづいているかががわかる。

2.学習者は誤用を産出することで、自分なりのルールの検証や軌道修正を行い、習得を進めていく。

3.母語話者が無意識に使っていることばのルールが明らかになる。

初級レベルの誤用例

あの公園ときれいと大きいです 簡単の作り方から母を教えてもらいました

上級レバルの誤用例

価値観はその人に応じて異なります どうすればいいかは知りかねます

中間言語

学習者の母語と目標言語をつなぐ、段階性を持つ言語体系

初級(前)

椅子 「に が を で から」 座ります ⇒ランダムエラーの段階 ルールがなく思いつくものを選ぶ

初級(中)

椅子 「に が を  から」 座ります ⇒「道具」の「で」は習得している

初級(前)

椅子 「に が  で から」 座ります ⇒一般的な他動詞文は習得している

グローバル・エラーとローカル・エラー

グローバル・エラー

コミュニケーションに支障を来すもので、他の形式にも関わる重大な誤用

ローカル・エラー

規範的な形式ではないが、コミュニケーション上は大きな問題はない誤用

正用:赤ワインを飲みました

誤用1:赤いワインを飲みました ⇒ローカル・エラー

赤い花・赤い傘 などは正用となる可能性が高い

誤用2:赤いのワインを飲みました ⇒グローバル・エラー

イ形容詞+の+名詞 という文法的な誤りが、他の表現でも起こる可能性が高いと考えられる

作文の誤用例

誤用例(初級学習者レベルの例文添削)

こえんへいきました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記

こえんはきれいとおおきいです ⇒グローバル・エラー 接続・活用

フルイ・マーケトかいものしました ⇒ローカル・エラー 語の選択 「を」の欠落とは考えない

にちようびのばん、わたしは、おかさんおかさんのしんせきのうちへいきました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記

ベジタリアンぱんごはんをたべました ⇒ローカル・エラー 語の選択

あかいワインをのみました ⇒ローカル・エラー 語の選択

おいしかたです ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 活用または文字表記

たくさんしゅうくだいしました ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 発音または文字表記 「を」の欠落とは考えない

わたしのしゅうまつはとてもたのしかたです ⇒グローバル・エラーとローカルエラー 活用または文字表記

代表的な「誤用の種類」①語の選択 ②活用・接続 ③助詞

①語の選択

語の選択の誤り

私は日本語の経済に趣味があります

私のペットは、古い犬です

おおきいこうえんでたんけんをしました

②活用・接続

活用や接続の誤り

活用はむずかしいだと思います

こうえんはきれいとおおきいです

さんぽをするの後で、家に帰りました

に近いのアパートに住んでいます

③助詞

助詞の選択の誤りや不足

この椅子座って下さい

コンビニ働いています

駅に近いアパート住んでいます

代表的な「誤用の種類」④発音 ⑤文型・活用 ⑥文字表記 ⑦不明

④発音

発音の誤り

たくさんしゅうくだいしました

はがっきに、きてをはて出します

わだしのこどもだちは、かごにかよています

きょうねんの3月にほね来ました

⑤文型・活用

文法的な誤り

かんたん作り方から母を教えてもらいました

日本人の友だち一人がいます。あの人はとても親切です

財布を落としましたどうすれば良いですかわかりません

日本へ来たとき、国で友だちパーティーをしてもらいました

料理の日本はとてもおいしいです

⑥文字表記

文字表記の誤り

びじゅつかんんの中でおしろや古いまのもけいや、小さいしびと古いふぬを見ました

⑦不明(語句)

正用の想定不能

びじゅつかんんの中でおしろや古いまちのもけいや、小さいしびいと古いふねを見ました

誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ①語の選択

語の干渉

了解・理解 折れる・割る(break) 模型・模範(model)

初級段階には多くみられるが、中・上級では少なくなっていく

過剰な一般化

大きい雨 割り箸を開けます 一人で漢字を習いました

頻度が高く、「母語の干渉」より圧倒的に多い

自動詞と他動詞の混同

窓を開きました 電話をバッグに入ります 休みが続けます

自動詞・他動詞の形態的な区別がない「中・越・英」語話者に多い

誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ②活用・接続

「~の名詞」

大きいのスプーン 読んだの本 私が持っているの本

連体修飾の余剰な「の」 中国語話者に多い

タ形とル形の混同

家に帰るのあとで勉強します 日本に来たまえ国で勉強しました

「~だと思う」引用節の余剰な「だ」

とても良いだと思います 難しいだと感じた 降るだと思った

接続助詞「~ても」の「も」の脱落

いくら聞いて、わからない 何回かいて、わからない 熱があって、仕事しなければならない

誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ③助詞

「に」と「で」の混同

工場に働いています 部屋に勉強します 駅に待っています

「に」→「を」

椅子を座る 友達と会う 壁をぶつかる テストを合格したい

「が」→「を」

カメラが壊れた たくさんお金をかかる 日本語をわからなかった

「が」→「は」

日本語教室はある日は木曜です 雨は降る日は嫌いです

誤用の種類ごとに見た「頻出する誤用」 ④発音

「ー」長音

去年⇒きょうねん ちょうど⇒ちょど カード⇒かど

「っ」促音

切手⇒きて 学校⇒がこ 猫⇒ねっこ 見て⇒みって

「だ/な/ら/」の混同

来年⇒だいねん・ないねん 名前⇒だまえ・らまえ 台⇒ない・らい

「つ」→「チュ」

机⇒チュクエ 疲れた⇒ちゅかれた いつも⇒いちゅも

「ざ・ず・ぜ・ぞ」→「じゃ・じゅ・じぇ・じょ」

雑誌⇒じゃっし ずっと⇒じゅど 風邪⇒かじぇ 家族⇒かじょく

「~ん+を」→「~の」、「~ん+へ」→「~ね」

本を読みます⇒ほの読みます 日本へ来ました⇒にほね来ました

 

 

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