☆日本語教師の学習56/動機付けとバイリンガリズム

動機付け

学習者によって学習に差が発生する要因

外的要因

場所 方法 時間 などの学習環境

内的要因

学習の動機 個人の性格 知能 言語適正 学習スタイル 学習開始年齢 など

「統合的動機付け」と「道具的動機付け」byガードナー&ランバード

統合的動機付け

目標言語の社会や文化への参加が第二言語を学習する動機となるもの

道具的動機付け

就職、昇進、社会的なたは経済的評価など、第二言語を学習することで実益を得ることが目的

「内発的動機付け」と「外発的動機付け」byデチ

「内発的動機付け」のほうが「外発的動機付け」より学習を持続させやすい

内発的動機付け

興味がある、おもしろいといった自分の内側から沸き起こる動機

長所

行動が持続する。能力開発や自己成長に繋がる。

短所

本人の興味や関心がないと難しい。個人差がある。効果が表れるまで時間がかかる。

外発的動機付け

外からの刺激(称賛・報酬・叱責)で何らかの利益を得ることが目的

長所

評価や報酬など、誰にでも使いやすい。短時間で効果が見込める。

短所

持続性がない。期待以上の成果が出にくい。自主性を引き出すことが難しい。慣れると効果が薄れる。強い刺激が必要。

自己決定理論

人からの強制よりも自分自身の意思で行ったほうが、より強い動機付けを生み出す

個人の性格

失敗を恐れない 内向的か外交的か 積極的か消極的か 異文化適応能力 コミュニケーション力

レディネス調査

アンケートやインタビューで情報を集める

外的条件

国籍 母語・母文化 年齢 職業 経済的条件 時間的条件 学習環境 生活環境

内的条件

外国語学習経験の有無 学習時間 使用教材 取得済の資格 運用能力についての自己評価 学習スタイル

言語適正

母語以外に他の言語を習得した事のある人 記憶力がある

予測テスト

適性の有無 どんな適正があるかを測定する

学習スタイル

認知スタイル

場独立

細部を全体から切り離して分析的に把握する。周りに左右されない。文法など形式中心の学習が得意。

場依存

物事を全体的に捉える。社会的スキル、文脈からの判断、流れの把握が得意。

ビリーフ(信念)

教師と学習者のビリーフが一致する必要がある 教師は学習者のビリーフに合わせた学習法を行う必要がある

バイリンガルとバイリンガリズム

バイリンガリズム

個人もしくは社会がに言語を使用している状況

モノリンガル

一言語使用者

バイリンガル

二言語使用できる人

マルチリンガル

三言語以上使用できる人

ダイグロシア

社会の中に2つの言語変種が存在し、状況によって使い分けされている社会状況

例:シンガポールでは、イングリッシュとシングリッシュが使い分けられている

言語能力と熟達度

バイリンガルの分類(言語能力)

読み書き型バイリンガル(バイリテラル)

聞く 読む 話す 書く

会話型バイリンガル

聞く 話す

聴解型バイリンガル

聞く

バイリンガルの分類(言語熟達度)

均衡バイリンガル(バランス・バイリンガル)

二つの言語を年齢相応の母側者レベルで使用できる

編重バイリンガル(ドミナント・バイリンガル)

一方の言語のみ年齢相応の母語話者レベルで使用できる

限定的バイリンガル(ダブル・リミテッド・バイリンガル)

両言語とも十分な言語能力を身につけていない (主に子ども)

言語習得時期

達成型バイリンガル

子ども時代を過ぎてからに言語使用を始める

獲得型バイリンガル

幼児期から二言語を始める

同時バイリンガル

幼児期から二言語を習得

連続バイリンガル

子どもが第一言語を習得してから第二言語を習得

文化習得

バイリンガルの分類(文化習得)

モノカルチャル

バイリンガルであっても文化的に一つの文化にとどまっている状態

バイカルチュラル

価値観や行動などが二つの文化にまたがっている

デカルチュラル

どちらの文化にも帰属意識がもてない。文化的アイデンティティの喪失

バイリンガルの分類(文化の捉え方)

付加的バイリンガリズム

バイリンガルになることで母語や母語文化に改めて価値を見出す状況

削減的バイリンガリズム

バイリンガルになることで母語や母語文化が失われてしまう状況

認知理論

Byカミンズ

分離基底言語能力モデルSUP(風船説)

第一言語と第二言語で培った能力が別々に機能する

共有基底言語能力モデルCUP(氷山説)

二つの言語は基底部分を共有している 主に学習言語能力

敷居理論

Byカミンズ

1階

限定的バイリンガル(ダブルリミテッド・バイリンガル)

二言語とも年齢相応のレベル未達 認知力への影響=マイナス

2階

編重バイリンガル(ドミナント・バイリンガル)

一言語のみ年齢相応のレベル 認知力への影響=プラスでもマイナスでもない

3階

均衡バイリンガル(バランス・バイリンガル)

二言語とも年齢相応のレベル 認知力への影響=プラス

発達相互依存仮説

発達相互依存仮説

Byカミンズ

第二言語習得は第一言語の発達度に依存している

2つの言語能力

Byカミンズ

生活言語能力 BICS ビクス

生活場面で必要とされる言語能力

学習言語能力 CALP カルプ

学習場面で必要とされる言語能力

バイリンガル教育

消極的なバイリンガル教育

移行型バイリンガル教育

家庭での少数派言語から社会の中で優勢な多数派言語へ移行する

サブマージョン・プログラム

少数派言語集団の子どもも、多数派言語集団の通常の学校教育を受ける

積極的なバイリンガル教育

維持型バイリンガル教育(継承語バイリンガル教育)

子どもの少数派言語を伸ばし、文化的アイデンティティを強化することを目指す

学校で少数派言語での授業も受ける

継承語

親から子へ受け継ぐ言語

母語 相続言語 民族語 コミュニティー語

イマージョン・プログラム

第二言語で学校教科を指導するバイリンガル教育

早期イマージョン:幼稚園や小学校低学年で開始

中期イマージョン:小学校高学年で開始

後期イマージョン:全教科全て第二言語で行う

部分的イマージョン:一部の科目のみイマージョンで実施

例:カナダでのフレンチイマージョン教育

日本語指導が必要な児童生徒

日本語指導が必要な児童生徒には「外国籍」と「日本国籍」が含まれる。

外国にルーツをもつ子供の言語を考える時には、その子供の「人権・言語権の保障」と「母語・母文化の継承」を考慮する必要がある。

日本語指導が必要な児童生徒の義務教育

日本国憲法第26条「国民がその保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う」⇒対象者は日本国籍の児童生徒

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国際人権A規約)・ユネスコ「学習権宣言」児童の権利に関する条約(第28条 教育についての権利)など により、外国籍の児童生徒も公立の義務教育諸学校への就学を希望する場合には無償で受け入れを行っている。

児童の権利に関する条約

第28条

1 締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、

(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。(d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。(e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。

2 締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

3 締約国は、特に全世界における無知及び非識字の廃絶に寄与し並びに科学上及び技術上の知識並びに最新の教育方法の利用を容易にするため、教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。

出典:外務省ホームページ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html

外国人児童生徒の学習状況

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数

約4万人

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

公立学校に在籍している外国籍の児童生徒数

公立学校に在籍している外国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数

約1万人

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の学校種別在籍状況(都道府県別)

愛知県が最も多い。

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の学校種別在籍状況(都道府県別)

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語別在籍状況(都道府県別)

ポルトガル語が最も多い。

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の母語別在籍状況(都道府県別)

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の学校種別在籍状況(都道府県別)

愛知県が最も多い。

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の学校種別在籍状況(都道府県別)

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の言語別在籍状況(都道府県別)

フィリピノ語が多い。その他も多い。

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒の言語別在籍状況(都道府県別)

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な児童生徒

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

公立学校に在籍している外国籍の児童生徒数

公立学校に在籍している外国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数

日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の在籍人数別学校数

約8,000校

日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の在籍人数別学校数

出典:文部科学省ホームページ https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

日本語指導が必要な児童生徒に対する指導及び課題

取り出し授業

正規の授業から取り出して別室で日本語指導をする

入り込み授業

教室に入って学習をサポート

拠点校方式

特定の学校に集中して在籍させる

メリット

指導のしやすさ 指導の受けやすさ

デメリット

遠い場合通学が大変

センター校方式

近隣の学校の日本語学級に定期的に通う

メリット

日本語指導が必要な間、十分な指導が受けられる。普段は学区内の学校でよい。

デメリット

都度番う学校に行かなくてはいけない。

JSLカリキュラム

日本語指導と教科指導とを総合的に捉え、学習活動に参加するための力の教育を目指す。

トピック型JSLカリキュラム

具体物や直接体験という活動を通して、しかも他の子どもとの関りを通じながら、日本語で学ぶ力を育成する。

教科志向型JSLカリキュラム

各教科特有の学ぶ力の育成を目指す。

 

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