学習観の変遷
教育観の変化
教育する⇒支援する⇒共生する へパラダイムシフト
1950年代~ 行動主義 教師は教育者
1960年代~ 認知主義 教師は支援者
1980年代~ 構成主義 教師もチームの一員 学習の主体は学習者
行動主義
学習の主体は教師であり、知識は普遍的なもの
学習理論
刺激に対する反応を繰り返す オーディオ・リンガル・メソッド、パターン・プラクティス、ミム・レム練習法
オーディオ・リンガル・メソッド
指導方法
音韻と文型習得のための繰り返し練習。パターン・プラクティス(文型練習)
パターン・プラクティス(文型練習)
目標とする文型を音声的、文法的に正確に操作する力をつけることを目的とする。
例:代入練習 変形練習 応答練習 拡大練習
ミム・メム練習
mimicry模倣と memorization記憶
教授者が口頭で示した文型を正確な発音、アクセント、リズムなどで模倣・反復・記憶する練習方法
認知主義
学習の主体は知識であり、新規事項と既有知識との関連付けによって身に付くもの 教師は支援者
学習理論
学習は学習者の脳内で起きる認知の仕組み
構成主義
学習の主体は知識であり、インターアクションを通じて共同的に構築されるもの 教師もチームの一員
状況的学習
学習者がその時に置かれた環境で適切な振舞い方を獲得する
インターアクション
授業中に行われる様々なやりとりのこと。教師と学習者または学習者同士が相互に関わり合うことによって、言語習得が促進される。
構成主義における学習理論
社会や文化の働きを重視 学習は社会とのやりとりを通じて行われる
正統的周辺参加 LLP (レイヴとウェンガー)
新人は実践的に共同体に参加し、学んでいく 状況的学習論
発達の近接的領域 ZPD (ヴィゴツキー)
子どもが独力で出来ないことに、「スキャフォールディング(足場掛け)」することで、独力でできるようにする
例:漢字にフリガナを振る
協働学習(ピア・ラーニング)
複数の人と協働して1つのタスクを実現するような学習方法
対話を通じて学習者同士がお互いの力を出して協力して学ぶ
例:学習者同士で相談して学習を進めていく
ピア・リーディング
学習者同士が対話を通じて、助け合いながら内容理解を深める読解活動
工程
前作業:課題(設問)の導入
本作業1:一人で文章を読んで問いに答える
本作業2:ペアで質問の答えを合わせてその理由を伝え合う
後作業:質問の答えについて、ペアで話し合ったことを発表する
メリット
・違う視点での読みに気づける
・テキストの理解を深め、自分自身の考え方や価値観の再検討ができる
・他者との対話が生まれる
・自律学習につながる
教師の役割
・活動しやすい環境作り
・学習者の内省の促進
ピア・レスポンス
学習者同士が互いの作文を読み合い、文章の内容や形式の両面にフィードバックを行うことで文章の改善を図る活動
工程
前作業:課題(設問)の導入
本作業1:一人で設問を読んで、文章を書く
本作業2:ペアやグループで、書いた文章を読み合い、フィードバックを行う
後作業:もう一度書く 推敲をして、文章の改善を図る
メリット
・自分が気が付かなかったことに気づける
・多様な視点が得られる
・批判的な読みができるようになる
・自らの作文も意識的に振り返ることができる
教師の役割
・活動しやすい環境作り
・学習者の内省の促進
ピア・リスニング
学習者同士で同じテキストを聴いて、対話を通じて内容理解を深める活動
自律学習
学習者が自分の学習を自分で管理し進めていくこと。自分のレベル、学習者タイプを把握し、自分のニーズに応じて学習を計画し、遂行すること。
・生きる力を養う
・学習者の多様化に対応する
学習者オートノミー
学習者自らが学習計画を立て、教材や学習環境を選び、学び、評価できる能力のこと。
ポートフォリオ
個人の活動記録や成果を集めたもの。保存だけでなく、内省・課題の発見と改善策の検討などに役立つ。
~1996年 ヨーロッパ言語学習記録帳 ELP
1996年 CEFR セフアール ヨーロッパ言語共通参照枠組み=外国語学習の共通基準 複言語主義
CEFR セフアール
ヨーロッパの言語教育・学習・評価の場で共通される枠組み
行動中心主義:言語を使って実際に何がどのくらいできるかを学習の目標にすること
複言語主義:ある個人がその生活状況に沿って複数の言語が使用されることを認めていく考え方
複言語主義と多言語主義、そして多文化主義
複言語主義
ある個人がその生活状況に沿って複数の言語が使用されることを認めていく考え方
多言語主義
ある社会の中で、複数の言語が使用されることを認めていく考え方
多文化主義
多言語主義の考え方をより広く、習慣・衣類などの文化にまで広げたもの
ポートフォリオ
個人の活動記録や成果を集めたもの。保存だけでなく、内省・課題の発見と改善策の検討などに役立つ。
学習者が自分の学習を振り返るための資料を保管するツール
ポートフォリオの効果
教師と学習者が学習目標と学習の過程を共有できる
学習者が他の教育機関に移動したときに過去の学習成果を正確に伝えることができる
学習者が自己評価や体験を記録することで、課題遂行能力や異文化理解能力だけでなく、自律的学習能力や学習の動機付けを高めることができる
日本語能力だけでなく、教室の中や外で学んだ様々な知識や技能の学習効果の評価も行うことができる
ポートフォリオの構成
評価表:自己評価チェックリスト、評価基準評価シート
言語的・文化的体験の記録:言語的・文化的体験と学び、自己目標学習計画振り返り
学習の成果:成果物一覧、作文レポート発表原稿など、プロジェクトの成果
日本語学習ポートフォリオと学習者・周囲の関係
出典:文部科学省ホームページ https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/nihongo_curriculum/index_4.html
学習環境
外国語環境
日常生活において目標言語が使用されていない環境にいる場合
第二言語環境
日常生活で目標言語が使用されている環境にいる場合
学習者の気付き(シュミット)
学習者が言語形式に気づくこと
フォーカス・オン・フォーム(byロング)
意味の理解ややりとりに注目するだけでなく、必要に応じて学習者の注意を言語の形式に向けさせる指導
言語形式の焦点化
フォーカス・オン・フォームズ
形式重視
代表的な教授法:オーディオ・リンガル・メソッド
オーディオ・リンガル・メソッド
正確な言語知識を「文型」として暗記・暗唱する。
倫理的基盤
構造言語学、行動心理学
言語観
言語は構造、言語の基本は音声
到達目標
話せるようになること (正しい文を口頭で発する)
指導法・練習法
教師主導:徹底した模倣、反復のミム・メム練習
文型に語句を代入するなどのパターン・プラクティス(文型練習)を繰り返す。
長所
文法を体系的に学習できる。反復による記憶促進。正確さの向上。
短所
反復練習が単調になりがち。意味の学習が不足するため、コミュニケーション能力が育ちにくい。
フォーカス・オン・ミーニング
意味重視
代表的な教授法:コミュニカティブ・アプローチ
コミュニカティブ・アプローチ
コミュニケーション重視しようとした考え方
目標・目的
コミュニケーション能力の獲得 意思疎通が出来るようになる
正確な文を作れるだけでなく、場面や状況に応じた言語使用が必要 Byハイムズ
伝達能力
文法能力 社会言語学的能力 ストラテジー能力 談話能力
理論的基盤
ハリデー:言語機能理論
言語観
言語は機能である
指導及び練習方法
学習者のニーズに応じた項目選定
生教材を使用
タスクやロールプレイ・プロジェクトワークなどを行う
長所
ニーズに沿って学べる 習ったことを応用しやすい
短所
体系的に学べない 正確さに欠ける
ノン・インターフェイス・ポジション
学習で身につけた「明示的知識」と習得で身につけた「暗示的知識」は別物という考え
インターフェイス・ポジション
学習で身につけた「明示的知識」と習得で身につけた「暗示的知識」が互いに関連するという考え
知識
明示的知識
規則などを分析的に説明できる知識
例:英語の文法、数式、理科の法則
暗示知識
無意識で感覚的な知識
例:母語の文法、母語の発音、自然習得した語彙、自然習得した発音
学習方法と学習時間
ビリーフ(信念)
教師と学習者のビリーフが一致する必要がある 教師は学習者のビリーフに合わせた学習法を行う必要がある
明示的学習
演繹(えんえき)的に言語使用を学習する
規則に関する仮説を検証する
指導を受けて規則を自分の中に取り込む
暗示的学習
多くの使用例に触れて、帰納的にその言語の構造的な特徴を身につける
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