目次
ステアリングギアボックス分解清掃・改良
空冷ビートルのステアリングギアボックスからオイルがにじみ出ており、オイル注入口のキャップも劣化しており、外そうとしたら砕けてギアボックスの中に落ちてしまったことから、ギアボックスを取り外して分解清掃し、今後のメンテナンスのための改良も加えました。
ステアリングギアボックス取り外し
燃料タンク取り外し
ガソリンを抜取り、燃料タンクを取り外します。燃料タンクは取り外さなくても、ステアリングボックスを外せなくはないですが、作業性を考えると外した方がいいです。
カップリングの取り外し
ステアリングシャフトとステアリングボックスを中継するカップリングを外します。カップリングは消耗部品ですので、作業前に確認して割れ等が発生していたら交換部品を準備しておきましょう。
4本の固定ボルトを外してカップリングを抜き取るのですが、ボルトの抜取りが固い場合は、先にステアリングギアボックスの車体への固定を緩めると、抜き取りやすくなります。
タイロッドエンド抜取り
ボルト抜け防止の割ピンを抜いて(年式によって異なります)ナットを外し、タイロッドエンドプーラーを使い、左右2つのタイロッドエンドを抜き取ります。
タイロッドエンドプーラーはプーラーのボルトを締めつけながら、時々プラスチックハンマーなどで叩いて、振動も与えた方がいいです。圧力だけだと、抜けにくいのと、急に抜けて危ないことがあります。
(写真は分解清掃後のもので、ギアボックス固定も外してあります。)
取付時の締め付けトルクは30N・mです。
ギアボックスの固定ボルト外し
下から2本で固定されているギアボックス固定のボルトを、回り止めプレートを解除して外します。
ギアボックスの固定位置はアクスルビームのボッチと固定プレートの切り欠きで決まりますが(年式によって異なるかもしれません)念のために固定位置をチェックしておきました。
これで、ギアボックスユニットが車体から取り外せます。
ギアボックスの分解
ピットマンアームの取り外し
左右のタイロッドに繋がるピットマンアームを外します。取付角度は正しく取り付けられるよう切り欠きが付いていますが、念のためにケガキました。固定ボルトはとても固いです。
ボックス上部の蓋外し
4隅のボルトを外し、中央のギアクリアランス調整ナットをを外して蓋を抜きます。
調整ナットは、念のため、外に出てるネジ山の数を数えておきます。
ギアボックスの清掃
アームに駆動を伝える縦軸をボックスから抜き取って洗浄します。ステアリングのウォームギアの軸受けにオイルを浸み込ませて回転させてみると多少のごろつきはありましたが、ベアリングの交換は不要と判断しました。
ギアの痛みもありません。
(元々、不具合があったわけではないですので。)
ボックス下部のオイルシールも劣化は見られず、弾力もあったので、そのまま使用します。
グリスの注入について
「グリスの注入」については、今回の改良点でもあります。
空冷ビートルのステアリングギアボックスに注入する潤滑剤は、ギアオイルまたは粘度の低いグリス(グリスとギアオイルをMIXした流動性の高いもの)が良いとされています。そしてそのグリスは下部のオイルシールからウォームギアまでボックスいっぱいに注入するようになっています。
しかし、ギアオイルは下部のオイルシールからにじみ出やすく、シールの劣化が進むとオイルが漏れるようになります。
改良点
注入する潤滑剤は「ちょう度2番」の普通のリチウムグリスとしました。そして、摺動部付近にのみ、たっぷりと塗りつけます。
その場合、ギアの嚙み合い部からグリスが下に落ちてグリス切れとなるリスクが高まります。
そこで、しばらくは様子を見ながら必要に応じてグリスを追加注入することとしました。
グリスの注入口
グリスの注油口は調整ナットの前後にある穴です。樹脂のキャップを外して注油します。
しかし、そこから注油すると注入したグリスが下へ落ちやすく、ギヤに回り込みにくいです。
ウォームギア側の蓋固定ボルト穴から注油すれば、ステアリングを左に回した時にグリスがギア部に入り込んでくれます。
そこで、今後はウォームギア側のボルト穴2か所から注油することとしました。
この位置であれば、ステアリング軸受け部へもグリスが行き渡ります。
ギアボックスの組付け・取付
ボックス上部の蓋固定ボルトは、「六角穴付きボルト」に交換しました。純正の六角ボルトでは、ギアボックスが車体に付いた状態で蓋を開けることができません。
フロントから見て左側手前のボルトを緩めるのに工具が入らないんです。
「六角穴付きボルト」なら、短い六角レンチで脱着が可能です。
そして、蓋を開ければギアボックスの中のグリスの状態も目視確認出来ます。
ギアクリアランスの仮調整
ギアボックスを組み上げた状態で、ステアリングシャフトを手で回してみます。クルクル回して中央付近(直進の位置)に来ると回転がきつくなります。直進走行の時はハンドルがブレないようになっているのですね。その位置で回した時に、きつくもなく緩くもない状態がベストと思われます。ここの調整はギアボックスを車体に取り付けた後で再度正規の調整で確認をします。
ギアボックスの車体への戻し
逆の手順で戻します。
年式にもよりますが、1969年以降?のtype1はピットマンアームに、ニョキっと角が生えていて、それがハンドルを左右一杯にきった時にストッパーに当たるようになっているので、左右のストッパーの間になるようにしてギアボックスを仮固定します。
タイヤを左右とも直進位置にして、ギアボックスのステアリングシャフトを回して、ギアボックスのステアリングシャフトを手で回してタイロッドエンドと位置を合わせ、取り付けます。そしてハンドルを直進位置にした状態でカップリングを戻します。もし角度が違っていたら、ハンドルが180度ズレるわけですから、誤差なく元に戻るはずです。
全てのボルトの締め付けを確認したら、ガソリンタンクを戻し、ガソリンも戻して、いざテスト走行!
Before・After
作業前と比べて、明らかにハンドルが軽くなりました。作業前も重かったわけではありませんが。
作業前に入っていた潤滑剤も、オイルではなくグリスでしたが粘度は不明です。
清掃して新しいグリスにしたことで動きが良くなったと思われます。
粘度の低いグリス、またはギアオイルなら、もっと動きが軽いのかもしれませんが、これでも十分軽いので、オイル漏れのことを考えたら、通常粘度のグリスのほうが良いというのが今回の作業の所見です。
今後は様子を見ながら、必要に応じてグリスを追加注入していきます。そうしているうちに、グリスがボックス一杯になるかもしれないですが、オイルシールからグリスが過度に漏れることはないと思います。
【追記2024年8月】
その後何度か追加注油して、オイル漏れもありませんでしたので、ギアボックス内全体をグリスで満たしました。
この記事が少しでもお役に立てば幸いです。最後まで見て下さり、ありがとうございました。
「シフトロッドブッシュ交換のコツ」も書いていますので、作業される方がいらっしゃいましたら参考にしてみてください。
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