日本語教師の学習/海外の日本語教育事情(国別)

海外の日本語教育事情(国別)

東アジア

東アジアにおける機関数・教師数・学習者数

東アジアにおける機関数・教師数・学習者数

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

中国

 世界で最も学習者数が多い中国では、2015 年度調査に比べて機関数、教師数および学習者数の全てが増加している。教育段階別にみていくと、初等教育は規模こそ大きくないものの、全教育段階の中で各項目の増加率が最も高い。幼少時から国際的視野を涵養する教育、また中等教育における日本語教育の先行導入を目的とし、初等教育から日本語クラスが設置されている事例が複数の地域でみられる。これまで小学生向けの日本語教材は地方レベルの出版社での刊行に留まっていたが、2017年には中国教育部傘下の人民教育出版社より小学生向け教材『らくらく小学生日本語』が発刊されている。
また、中等教育においても同様に機関数、教師数、学習者数が揃って大幅に増加している。理由としては、
中国語話者にとって比較的学習しやすい日本語を大学入学試験の外国語科目として選択する学生の増加が影響したことが挙げられる。特に南方地域(広東省、貴州省、江蘇省、浙江省等)においてこうした傾向が顕著で、学習者数が著しく増加している。
一方で、高等教育では機関数、教師数、学習者数のいずれも程度の差こそはあるものの前回調査よりも減少している。背景として、一時期乱立した学科の整理統合のほか、大卒以上の就職市場における必要スキルとして英語が依然最重要視される傾向があり、大学入試を日本語で受験した学生が入学後に学習を継続しないケースもしばしばみられる。
学校教育以外のカテゴリでは機関数、教師数、学習者数ともに増加している。また、円安や査証取得条件の緩和等による訪日観光客の増加等も背景に、成人層含む民間の教育機関等における学習者が増加しており、昇進や各種資格の取得試験のために日本語を学習する人も引き続き多くなっている

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

韓国

韓国については、機関数、教師数が微増だった一方、学習者数は微減している。教育段階別にみてみると、
学校教育以外のカテゴリにおける学習者数は増加し、一方で初等教育から高等教育の各段階、すなわち若
年層の学習者は揃って前回よりも減少している。急速な少子化の進行により初等教育から高等教育にかけて学生の絶対数自体が減少していることが、学習者数減少の主な要因である。その他、学校教育制度の変遷の中で英語教育の早期化・重点化が図られてきたことに加え、2011年施行の中等教育の改訂教育課程において日本語を含む第二外国語が必修科目から選択科目になったことも、減少の理由として挙げられる。
また、高等教育では、2016 年に韓国の教育部が打ち出した高等教育政策「Prime 事業(人文・芸術・体
育学科の人数を削減する代わりに理工系の定員を増やす政策)」により、人文学系の学部の統廃合が加速し
ていることが挙げられる。この措置により日本学科などが他学科と統合され定員縮小となるケースがみられ、
それに伴って日本語の学習者数も減少していると考えられる。
一方で、民間の日本語学校等を含む学校教育以外のカテゴリにおける学習者数は前回調査から3 万人近
く増加した。背景としては、韓国での新卒学生の就職状況の厳しさに伴って日本で就職を目指したり、それ
を視野に日本へ留学する学生の数が増加していることが挙げられる。他の指標をみてみると、韓国での日本
語能力試験(JLPT)の応募者数は 2015 年を底に増加を続け、2018 年には 2011年以来初めて年間10万人を
超えている。また日本留学試験(EJU)の韓国での応募者数は 2018 年に9,000人に達し、前年を45%上回
って過去最高を大きく更新している。また調査年である2018 年度は日本への観光目的の旅行者数が過去最
高となっていたことも学校教育以外での学習者数の増加の背景と考えられる。
国全体での日本語学習者が減少する一方で、機関数と教師数については前回調査より微増という結果で
あった。中等、高等教育を中心に学生数が減少してはいたものの、それによって直ちに科目を廃止したり
教員を解雇できるわけではなく、また学校教育以外のカテゴリでは上記の理由から機関数と教師数が大幅
に伸びているため、国全体としては増加という結果になっている。なお、2016 年より2018 年の期間につい
ては、それまで 5 年間中断されていた公立中等教育機関の日本語教員任用試験が実施された。

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

台湾

台湾については、教師数が 5.9% 増加しているものの機関数は 0.6% 微減となり、学習者数は前回比で
22.7% 減少している。教育段階別に学習者数の増減をみてみると、学校教育以外のカテゴリにおいては微
増しているものの、初等教育から高等教育までの段階では揃って減少しており、特に日本語学習者層の 4 分
の3を占める中等教育および高等教育の学習者数は前回比で30% 弱の減少となっている。
中等教育では機関数は横ばいだったのに対して学習者数の減少率が大きいが、これは提供クラス数の
減少やクラスサイズの縮小が主な理由であると考えられる。台湾は世界的にみても出生率が最も低い地域の
一つであるが、急速に進行している少子化に加えて学校側のカリキュラム編成や学生の科目選択において英
語をはじめとする他の外国語を志向するケースが増えていることも理由として考えられる。
また、学習者数の 4 割を占める高等教育での減少についても、やはり少子化によって大学に進学する世代
の人口自体が減少していること、それに伴って大学間、学部・学科間で統廃合が相次いでいることが背景とし
て挙げられる。実際に高等教育機関で日本語教育を実施する機関は、前回調査から数にして29 機関、17
%の減少となっている。また学習者の主要層である若年者の人口が毎年急速に減少し続けている中で、大
学が生き残り戦略として語学等の教養科目から、より実利的な科目に重点をシフトしつつあるということも背
景として挙げられる。
一方で、学校教育以外のカテゴリでは機関数、教師数、学習者数とも前回より少し増加している。台湾
から観光目的で訪日する人やワーキングホリデーを利用した日本への滞在者の増加とも連動しており、実際
に学習目的・理由の設問で「日本への観光旅行」を選択している人の割合は、同じく2018 年度に多くの訪日観光客数を記録した中国や韓国を上回るほどであった。年齢層は年少者から高齢者まで幅広くなっており、
学校教育における学習者数が減少傾向にある中で注目に値する。

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

東南アジア

東南アジアにおける機関数・教師数・学習者数

東南アジアにおける機関数・教師数・学習者数

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

インドネシア

 世界第 2 位の学習者数を抱えるインドネシアでは、2015 年度調査と同様に、機関数、教師数が増加して
いる一方で、学習者数は前回よりも減少している。教育段階別にみると、初等、高等、学校教育以外では
機関数、教師数、学習者数が揃って増加しているものの、同国の日本語教育において最大の規模である中
等教育において前回に引き続き学習者数が減少している。同国は中等教育の学習者数が全体の 9 割以上を
占めるが、2013 年の教育課程改訂によって、それまで必修科目だった第二外国語が選択科目になって以来、
日本語クラスの開講を取り止めたり、クラスを縮小する中等教育機関が出ていることなどが理由として考えら
れる。ただし、2015 年度調査に比べると減少幅は小さくなっており、学習者数の減少に歯止めがかかりつ
つあることもうかがえる。
初等教育については国全体に占める割合は大きくないものの、前回調査より機関数、教師数、学習者数と
もに増加している。初等教育の学習者は西ジャワ州とバリ州に集中しているが、前回調査で初等教育の学習
者数が最も多かった西ジャワ州では生徒数の多い公立の小学校で日本語のクラスを取りやめた学校がいくつ
かあったことが影響し、学習者数は約 2,600人減少している。一方でバリ州では州内の大学と連携している
いくつかの小学校で日本語クラスが新たに確認されたため、約 3,800人学習者数が増加している。
高等教育についても同様に地域毎に差はあるものの、
学習者数の多いジャカルタ首都特別州や西ジャワ州で増加しており、国全体としては前回調査に比べて増加
となっている。
民間の日本語学校や研修機関等を含む学校教育以外のカテゴリでは、高校卒業程度のインドネシア人が
民間の機関において短期間で日本語を学習し、技能実習制度等を利用して渡日するケースがみられる。こ
のカテゴリの学習者数は前回調査に比べて3 倍近くになっており、地方部においても学習者数の増加が顕著
な州が多くみられる。2019 年度からは新しい在留資格である「特定技能」が創設され、就労を目的として
訪日する人が増加することも見込まれ、日本語学習者数もそれに従って増加する可能性もある。

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

大洋州

大洋州における機関数・教師数・学習者数

大洋州における機関数・教師数・学習者数

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

オーストラリア

1970年代 白豪主義 ⇒多文化主義

LOTE:ローテ Language Other Than English

アラビア語 ギリシア語 中国語 日本語 フランス語 イタリア語 ドイツ語 スペイン語 インドネシア語 マレー語

NALSAS National Asian Languages and Studies in Austrian Schools

1994年~2002年

オーストラリアの学校における アジア語・アジア学習推進計画

中国語 日本語 インドネシア語 韓国語

NALSSPNational Asian Languages and Studies in Schools Program

2009年~2011年

学校におけるアジア語・アジア学習推進計画

中国語 日本語 インドネシア語 韓国語

 大洋州最大の日本語教育国であるオーストラリアでは、機関数、教師数、学習者数の全てが増加している。
教育段階別にみると、初等教育については全ての項目が増加しており、特に学習者数については前回比で
24%、人数にして5 万人近く増加している。全豪統一のカリキュラム「Australia Curriculum(2011)」において外国語の必修化に向けた方針が打ち出され、それに基づいて各州のカリキュラムが段階的に改訂され、
いくつかの州ではその言語教育政策を背景に日本語を含めた外国語教育を受ける児童・生徒数が大幅に増加している。また、日本文化全般への関心の高さ、旅行やビジネスなど民間レベルでの日豪の相互交流の機会の多さ、州ごとに強固な教師間のネットワークが存在するといった優位性があることも、日本語がこの政策変更に伴う学習者数増加の恩恵を受ける好材料となっている。全世界の初等教育の学習者のうち、実に 8 割近くをオーストラリアが占めているが、前回調査よりもその割合は高まっている。なお、全ての州で同様の政策が施行されているわけではなく、初等教育での言語教育が義務化されていないニューサウスウェールズ州では初等教育の学習者数が減少している。
中等教育については機関数と学習者数がともに減少する結果となっている。政策レベルの変更に依らない
中等教育学習者の減少は調査開始以来初めてのことである。他言語(特に中国語)の導入に伴い日本語が
中止になるケースのほか、日本語に限らず言語科目そのものが STEM 科目(科学・技術・工学・数学)に切
り替えられたケースもあった。
また、初等教育、中等教育と比べると規模は小さいものの、今回調査では高等教育の学習者数が大幅に
増加している。若い世代の間で引き続き日本語学習への関心が高いこと、多くの機関で理系の学生にも外国
語科目の履修を推奨する方針が継続していることを受け、ほぼ全ての州で学習者数が増加している。全豪で増
加しているアジア諸国、とりわけ中国語を母語とする留学生の増加による影響は顕著であり、大学によって
は履修者の大部分を占めているケースもある。
学校教育以外のカテゴリは国全体から見れば僅かな割合ではあるが、機関数、教師数、学習者数ともに10 〜20%の増加となっている。

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

北米における機関数・教師数・学習者数

北米における機関数・教師数・学習者数

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

アメリカ

NCLB 法(No Child Left Behind Act)

2002年~2015年

学習者が一定の基準を上回る習熟度を達成できるような教育現場を目指す

Advanced Placement(AP プログラム)

2006年

「AP (Advanced Placement) Japanese Language and Culture」(AP日本語)が開始。AP日本語コースは、高校で大学レベルの日本語コースの履修が可能。2010年度以降、日本語教育も含めて選択科目が一般的に削減される傾向にある。

 米国は 2015 年度調査での「機関数と学習者数が増加した一方で、教師数が減少」という結果から一転し、
「機関数と学習者が減少、教師数は増加」という結果になった。学習者数の減少がみられたのは初等教育お
よび中等教育の各段階であるが、義務教育課程であるK-12レベルでは州単位での外国語教育予算の削減
傾向が続いており、各地で日本語プログラムを閉鎖・縮小する動きがみられたことが国全体の学習者数の微
減につながっていると考えられる。一方で教師数は前回よりも増加しているが、常勤のポストが削られる代わ
りに複数名の非常勤講師が雇用されるというケースが多くなっており、これにより見かけ上の教師数が増えて
はいるものの、むしろ教育財政の厳しさが反映されている結果であるといえる。なお、これについては国際
交流基金の給与助成等により、日本語プログラムの廃止や縮小に一定の歯止めがかかっているとの報告もある。
一方で、高等教育における学習者数は 2015 年度調査に続いて増加している。初等・中等教育レベルで日
本語を学んだ学習者が大学入学後も学習を継続するケースが多いと考えられること、大学の外国語科目として
日本語を履修することの多い中国や韓国など東アジア圏からの留学生が増えていることが背景として挙げら
れ る。な お、米 国 現 代 語 学 文 学 協 会(ModernLanguage Association)の統計によると、2013 年か
ら2016 年の間に米国の大学における外国語履修者の全体数が減少していた中で日本語と韓国語のみが増加
しており、本調査の結果もこれと一致している。
米国での日本語教育は学校教育が主流であり、民間の語学学校等が含まれる学校教育以外のカテゴリ
が占める割合は少ないものの、今回調査においては機関数、教師数、学習者数ともに増加している。
州別の学習者数の増減については、最も学習者数が多いカリフォルニア州と2 番目のハワイ州、4 番目の
ニューヨーク州では減少しているものの、3 位のワシントン州や 5 位のテキサス州では増加している。全米で
みると23 州で増加、27州で減少という結果になっている。学習目的・理由をみてみると、今回調査も前回
同様「アニメ・マンガ・J-POP・ファッション等への興味」の割合が最も多い。また、ポップカルチャーの分野にとどまらず、「歴史・文学・芸術等への関心」が占める割合も高い。

出典 国際交流基金 https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf

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